乳白色の雲に覆われた空からは微かな光が降り注ぎ、時折吹く風は柔らかに頬を撫でる昼下がり。

遷宮あざみは特に何をするわけでもなく空を眺めていた。
今は体育の時間、彼女の通う聖ミランシア学園は表向きは全国各地から名家の御子息御令嬢の集う超名門私立だ。初等部から大学まで試験はあるがエスカレーター型式で上っていく、今はもう希少価値の高い寮制の普通科高校。
その実態は魔術師の教育を行う数奇な学校だ。
そんなことを言われて信じる人間は少ないと思うが、彼女の目の前で繰り広げられる光景を見れば納得するだろう。


女子生徒同士が拳をぶつけ合い、火花が散る。鋭い蹴りが青白い光を帯びて加速し、脇腹に命中したと思われたが響いたのは甲高い金属音。また、火花が散った。

青白い光や赤い光、拳や脚を取り巻く円形の魔法陣。総てが現実で、何一つ嘘偽りを含まない。


正真正銘魔術を使用した実践訓練だ。


そして、そんな実践訓練が行われる学園に属する彼女も当然魔術師なのであった。