美人さんと話す新を見ていたくなくて、何となく視線を飛行機へと移す。


手持ち無沙汰にぼんやりとしていると見知らぬ男性に声をかけられた。


「お1人ですか?」

スーツを着た渋めのおじ様。
ナンパだろうか。いや、たぶんこれはナンパだ。空港でナンパって新手過ぎるだろ。

「1人ですけど。」


「良かったら搭乗までお話しませんか?僕も1人なんですけど、早く来すぎて暇で暇で仕方なくて。」


医者もある意味接客業だ。見ず知らずの人と話すのは慣れているし、この人はそんなに不審なことをする様子でもない。


「私でよければ。」


私は柔らかく微笑んでおじ様に答える。
搭乗までのおしゃべりで浮気にはならないだろう。



新はあんな距離で‘同僚’と話していたのだから。