「俺にとっての兄はヒーローでさ、
何でも器用にこなす兄さんが大好きで、
俺もそのあとを追いかけてた。

両親は、俺が小さい頃から喧嘩ばかりで、
家庭内別居状態で家にいても、
息が詰まっていくだけだった。

親と話すことって言ったら、
『もしも離婚したら、ママの方について
きてくれるよね。』とか自分の利益しか
考えてなかった。

テストでいい点数とるのが当たり前で、
褒められたことも無かった。
テストの点数が悪いと怒られて……。


自分に自信がなくて、誰にも愛されない子だって思ってた。


でも、兄さんだけは俺のことを考えて
くれてた。
  

それで……」


「伊織、どうしたの?」

 
「いや、大丈夫。

一ヶ月前、琴葉と今の関係になる少し前 


兄さんが、ゲイって告白したんだ。


衝撃過ぎて、一言も話せなかった。

親もパニックしてたし、話ながら、
兄さん怒られてた。

俺も最初はあり得ない、そう思ったんだ。


それから、兄さんと距離を置いてた。


生徒会の仕事も手につかなくて、そんな時
琴葉を見つけた。

そのときに思い出したんだ、
兄さんが言ってたこと。


『俺はアイツのことが好きなんです。
アイツだから、好きなんです。
アイツと一緒じゃないと生きていけない
んです』


知りたいと思った。


ここまで人を熱くさせてる気持ちを……」