GIVE and TAKE ~彼へ 愛の教え方~

        駅へ



「琴葉って家どこなんだ」


「学園の近くだよ」


「そうか」


その時


「ママどこ、ママぁ」


あの男の子、迷子かな。


「ちょっと待ってろ」


「伊織」


伊織は、男の子の目線に合わせて座り、
優しい声で、


「迷子か、ママとはぐれたのか?」


「うん、ママいなくなちゃった」


「そうか、どこではぐれたんだ」 


「電車降りて、ピってするところでね、
いなくなちゃったの」


「改札付近か、そこまで一緒に行って
見よう、ママもきっと探してるから」


「うん」


今にも泣きそうな男の子を宥めながら
的確に判断している。


「伊織、私も一緒に行く」

「あぁ、頼む、君も行こう」


男の子と手を繋いだ。




      改札付近へ 


「ママ、いるといいね」


今にも、泣き出しそうだ。


「今は、泣くな、ママに会ったときに
取っておけ」


「うん」


数分の間になつかれてる。


駅員さんに話しかけてる女の人がいた。


「五歳の息子がいないんです」


「落ち着いてください」


あれかな。


「君のママか?」


うつむいていた、男の子が顔を上げて
駆け出した。


「ママぁ」


「らく!」


「ママぁ、うぇぇん」


男の子は泣き出していた。


「もう、どこに行ったかと思った。
本当に心配したんだから」


そう言いながら、男の子をお母さんは
抱き締めていた。

お母さんの方も少し涙目になっている。


「ごめんなさい」


「もう、良かった」


無事にあえて、良かった。


「良かったな」


その時の伊織は、凄く穏やかな顔を
していた。


お母さんは、こっちに気づいて、


「あの、ありがとうございます。
うちの息子がお世話になって」


「いや、対したことはしてないです」


お母さんは、深々と頭を下げた。


「お兄さん、お姉さん、ありがとう。」


「ママにあえて、良かったね。」


「うん。」


満面の笑みで答えてくれた。


「良かったな、一人の時に泣かなかった
ご褒美だ」


あめ玉が入った袋、出してきた。


「ありがとう」


袋からあめ玉を数個出して男の子に
あげた。


伊織は、その男の子に耳打ちをして、
男の子は元気に返事をした。


「お兄さん、お姉さん、バイバイ」


男の子は、元気に手を振っていた。

お母さんの方も頭を下げて行った。


「さて、俺らも帰るか」

「うん」