「くれぐれも失礼のないようにしなさいよね?」


マクリはリヒトに近づき念をおす


「それに父もこの国に関して快くは思ってないみたいなのよ」


「草の国とは昔から友好関係にあるんじゃなかったのか?」


マクリはこの国のチョコレートの立派な城を見据える


「今の国王昔は評判悪くて、新しい若い世代に引き継いだらしいのだけど、その新しい国王は僅か2年で亡くなってしまったらしいの。理由は謎なのよ」


父は国王が怪しいっていつも言ってるのとこそっと耳打ちする
外に聞かれるのを恐れたのだろうか


「昔は評判悪かった国王は今や国民に崇拝される存在にまでなってるの。詳しくは分からないけれどとにかく怪しいみたいなのよ」


「なんだか重い話みたいだね」


リヒトがため息をつくと


「2年間だけ務めた国王様は物凄いイケメンで何でもできる完璧超人だって聞いた事があるわ。それに妹もいたらしいわ。きっと何でもできる可愛らしい子だと思うわ」


「へー妹がねぇ」


「今は行方不明なのよ」


謎が謎を呼ぶ
リヒト達が雑談している間にもう城の前までついていた



中に入れば、そこは外と同じようなお菓子の作りだがどこか気品に溢れていた


「この階段を登った先よ」



チョコでできた立派な階段を渡れば広い部屋の長椅子に座る男がいた


「ようこそお菓子の国へ。そちらはお客かな?」


国王はにこやかに挨拶をしてきたが目が笑っていない
リヒトに近づきそして何かに気づいた国王は一瞬獣を狙うようなぎらついた目をしていたがすぐに笑う


「草の国の姫君」


マクリが肩をふるわせれば国王は近づきそして肩に手をおき


「お手柄だよ。星の使い手まで連れてきてくれるとは」


星の使い手?と2人は疑問に思ったが、それを考えている暇はない
2人の周りを武装した兵士が取り囲む


「これだけ?私も舐められたものね。処女宮の力見せてあげるわ」



マクリの付近から花や草が溢れ出したかと思えばそれは吸い込まれたかのように消えてしまう


「…え?これは何なの…」


混乱するマクリに対して不敵な笑みを浮かべる国王


マクリは魔法が使えない、ならとリヒトは胸のペンダントを探すが、


「ない!ペンダントがない」


「こんな時に何やってんのよ!」


マクリは呆れたようにため息をついた


「いまここで君たちを殺せば、この世界は我らが王のものだ」



『我らが王のものだ』


国王が言えば周りの兵士までもがそう言った


「なんだ…これ?」


マクリがこの国王について少し話してくれたがそれを越える異常性がこの国王にはあった


「さあその者を殺すがいい」



すると兵士達はリヒト達に襲いかかってきた

が、兵士達の目はまるで死んだ魚のように濁っていた


逃げ道を探すもこの空間にこれだけいればそれは困難だ
ましてや魔法が使えない武器もない状態ではそれは無理に近い


(やられる…)

そう覚悟した時


「チョコの魔法 リイピィ」



上でまだ幼さの残る可愛げのある声がした
見上げるばそこに高く飛び上がった茶色の髪の少女がいた


手にはチョコでできた双剣を持っていて、それを国王に向け攻撃を仕向けるが国王は動かない


茶色の髪の少女が振り落とす剣を受け止めたのは彼女より少し身長の高い女の子だ



「姉さんその剣を引いてよね。チョコの匂いが不快なの」


茶色の髪の少女を姉さんと呼ぶその子は彼女に対し挑発をした


「このっ…お前なんて1発で…」


最初会ったときからは想像出来ないその顔を見て少しリヒトは驚いた


「ミル!今はこいつらの救出が先だ。私情は挟むな」


今にも攻撃をしそうな彼女に対してそういったのは黒い髪の少年


「わかってる…」

不機嫌そうだがしぶしぶ従う彼女は最初会ったと同じ穏やかな子供の表情に戻っていた


「それよりこれお前のだろ?あいつが拾ってくれたんだぞ」


「これは…」


黒い髪の少年がリヒトの手に渡したのはあのペンダント

どうやら茶色の髪の少女が拾ってくれたみたいだ

「それより早くしないと敵に囲まれてしまうよ」


ゆっくりと前に出たのはベージュ色の髪の少年


「ペンダントも戻ったし、さっきの仕返ししてやらないとね」


リヒトはペンダントを握りしめ

「12の星座の一星 処女宮の力 豊穣の女神!」


変化した剣からはマクリと同じ緑の光が溢れ、麦穂と棗椰子が敵に襲いかかった
お菓子でできた城はすっかり麦穂と棗椰子で埋め尽くされた



「流石は星の使い手だね」


「お前達は…?」


そう聞いたリヒトにベージュ色の髪の少年は

「それは後でだ。とりあえずここから離れるべきだね」


さっき出会った少女と謎の少年2人に言われついていくリヒト