少し小さめのこの家にアップルパイの焼けているであろういい匂いがする


「りんご拾ってくれてありがと!お兄ちゃん、お姉ちゃん!あっミルです。えへへっ」


茶色の髪の少女はミルという名前らしい
照れくさそうに微笑みながらいうミルは今エプロンをつけたままだ
アップルパイを作ったのはミルなのだ


「オレはスグルだ。まあよろしくな」


ぶっきらぼうに黒髪の少年はそう名乗った
スグルの瞳は燃え盛る火焰の如く真っ赤な色
長く黒いジャンパーをはおり腰にはチェーンがついていた


「俺はユウ。あと俺達、きっと君の力になれると思うよ」


ベージュ色の髪の少年は、何もかも見透かしたように言った
青い綺麗な瞳は何故か威圧感もあった


「さっきは助けてくれてありがとう。それで3人は兄弟?」


リヒトが言うとミルは頬を膨らませて


「みんな同い年だもん。それに誕生日はミルが1番早いもん」

(じゃあユウとスグルが少し大人っぽく見えるだけで、俺より年下か?)


リヒトを見透かしたようにユウは


「たぶん同じくらいだよ。俺達16だしね」


「え?俺と同じ年…」


「私もだ」


同い年だったのか…とみんなで思っていると


「じゃあ君たちお兄ちゃんじゃないじゃん…」


ミルが理不尽だとでもいいたげな顔をした



「俺はリヒト、で、こっちはマクリ」


そんなリヒトを遮って


「お兄ちゃんに似てるしお兄ちゃんでいーよね?」


机に乗りだし、キラキラした目でそう言われれば、断れない


「まあいい…」

「ミルちゃんってお兄さんがいたのね」


リヒトを無視し、机の上に乗りだしそういう


「うん。もういないけど」


遠い目をするミルはとても悲しそうに見えた

「あっでも義理の妹は生きてるよ。まああいつなんて…」


最後は聞き取れなかったが、一瞬ミルの目が怪しく光った


「ごめん。それよりアップルパイ焼けたから」


アップルパイの様子を見に行ったミルを見て、それからリヒト達を見て

「ミルの前で義理の妹と親の話は厳禁だ」

そうコソっと呟くスグルの目には強い光があった
それはミルを守る意味なのかもしれない


「焼けたよ!」


にっこり笑う彼女にはこのままでいて欲しいと何故か心で祈っている一同


「ミル特製なんだ!」


「ミルの作るお菓子は美味しいからね」


ユウがそう褒め、ミルの頭を撫でる姿をスグルは面白くなさそうに見る


たしかにユウが言うだけあって美味しい

「そういえばみんなどこの国出身なんだ?」


スグルが思い出したように、パイを頬張りながらいうと


「ミルはここだよ!」

「私は草の国ね」

「オレは炎の国だ」

「俺は学問の国だな」


みんな即答で出身地をいう中リヒトだけは黙っていた

「お兄ちゃんどうしたの?」

「俺…実は…」


皆の視線がリヒト1点に集中する






「昔の…一部の記憶がないんだ」