バンテスト魔法書の保持者

青年が手に力を込める。


「ぐ‥‥‥ぁ‥‥‥」


苦しい‥‥‥苦しい‥‥‥苦しい!


息がほとんど出来ない状態。


だが、彼女はしっかりと強い目で青年を睨み付ける。


そして微かに入る空気を利用し、無表情な青年に言葉をかける。


「ファ、ザ、に、なに、し、」


青年は再び目を細め、手の力を少しだけ抜く。


息ができるようになり、懸命に酸素を身体に取り込んだ。


「水魔法を紡いだのはお前だな?」


「フゥ‥‥‥フゥ‥‥‥」


荒く息をし、まるで威嚇するように青年を睨み付ける。


青年は、なぜか気分が良さそうだったのを覚えている。


「素晴らしい魔法だった。まさか私の魔法の炎が消えるとは思ってもみなかったぞ」


「!、炎の、まほ、」


「そうだ。あの炎は私が作り出したモノだ」


「グッ、このっ!」


自分の首を掴んでいる青年の腕に爪をたてる。


許さない‥‥‥、許さない‥‥‥!


心が、初めての感情に覆い尽くされる。


それは綺麗な正義感でなく‥‥‥


どこまでも純粋な、黒の感情。


「だが‥‥‥あの程度では私の炎は滅されはしないぞ?」


「?」


そんなはずはない。


この辺りの炎は消えている。


火の欠片も見当たらない。


だが、目の前の青年が嘘を言っているようにも見えなかった。