バンテスト魔法書の保持者

彼女のいるこの森は、森を囲うように高密度な結界が張られている。


それは、ファーザーがルクスと、森の皆と共に張った結界。


壊すことはほぼ不可能なほど、美しい結界。


外からの侵入を拒み、この森が認めたものしか入れない。


例外はない‥‥‥はず。


「結界のことか?」


「!」


「結界なら壊れたぞ」


「そ、んな、こと‥‥‥」


「不可能、か?」


「!」


嘘を言っているようには見えなかった。


あの結界を壊せるほどの魔法。


そんなものは知らない。


「!‥‥‥壊れ‥‥た?」


〈壊した〉のではなく〈壊れた〉。


そして〈解かれた〉とも言っていない。


青年が目を細める。


彼女は頭が冷静になっていく。


そして、1つの可能性。


壊れた。


あの、結界が‥‥‥


「ねぇ‥‥‥」


彼女が、青年に話しかける。


それは酷く震えていて、か細く‥‥‥


何かに震えている声。


1つの可能性が、頭を巡る。


否定したくなるような、1つの可能性。


結界は壊れた音がしなかった。


それは結界が無理やり壊されたのではなく、自然と解けたことを意味する。