直ぐに子猫ちゃんのところまで行こうとしたけど、身体が動かなかった。


『マスター、今の状態で動いてはいけません!
お身体は限界です!』


ミミーチャの声が頭に響き、子猫ちゃんが落ちるのを見つめるしかなかった。


落ちる‥‥‥


そう思ったが、子猫ちゃんが地面につくことはなかった。


音もなく現れた、銀髪君。


空中で子猫ちゃんを抱きとめると、トンッと軽やかに地面に着地した。


「ぅ、リ、オウ?」


「リューラ、無理して話さなくていい」


銀髪君がそう言った後、子猫ちゃんの身体が淡く光りシンルス君と分別した。


それを確認して、僕もフュージョンを解いた。


そして、コロシアム中心の上空を睨みあげる。


1人の男が、空中に浮いていた。


男はゆっくりと地面に着地する。


黒のスーツに、黒のマントを着た40代前半くらいの見た目。


琥珀色の瞳に白銀の髪。


「この勝負、4年Sクラス オシレット・ダーシングの勝利とする」


一瞬の間。


その後、コロシアムは歓声で埋め尽くされた。


喜ぶ、べきなのだろうか?


僕はジッと男を睨みつけたまま、ミミーチャに支えられながら立ち上がる。


ハンラルトの血縁にして、現在国王の弟。


そしてこのハンラルト学園の学園長。


ディートリヒ・ハンラルト。


学園長は一瞬だけ僕を見るか、直ぐに子猫ちゃん達の方に目を移した。


「ミミーチャ、もう大丈夫だ。戻ってろ」


「しかしマスター‥‥‥」