誰にでも優しい上司に困惑




「そうなんだ、送っていこうか?俺、車なんだ」



絶対乗らない…
乗ったら絶対やばい


そんなの篠原さんの目つきでわかる


『だ、大丈夫です。……迎えに来るんで』


迎えになんて来ない
だけど、どうやっても
この場から逃げないと……


そう思っていたら
篠原さんがいきなり近づいてきて
私の腕をガシッと掴んだ

ビクッと肩を怖ばせ若干の震えが起きる
掴まれている腕が嫌に冷たくて
とても重たくて……ギリギリと
篠原さんの指が食い込んでくる気がした



怖いっ



「行こうか?」



篠原さんの言葉に何も言えない
運が悪いのか、今日に限って人がいない


助けて……


そう願っても、うまく言葉が出てこない
腕を引っ張られるように歩かされる



『い、いやっ!……は、離してっ』


ようやく発した言葉は
いつもより小さい声だった
自分でもこれほどまでに弱いのかと…


どんなに抵抗しても、離してくれず
逆にガッシリ掴まれてしまう


篠原さんの車だろう
助手席のドアを開けて
無理矢理押し込もうとした