かくして私は、颯の監視という目的を持って、この席にいるわけだ。

「…大丈夫。色々焦っちゃったりしたけど、多分台本通りだから」

指定された席に近づいてくる颯に、目で合図をした。

「ヤバい、あっち見れない…」
「見たらキュン死にするから?」
「そうそう。…まずは後ろ姿から慣れないと…」

颯が直視できないほどのイケメンだという私の感想は決してゆがんだものではないということは、三人のこの反応から容易に導き出された。

「あ…そうだ、自己紹介しないとね。私、一条愛(イチジョウ・アイ)。よろしく!」

数秒前は「あっち見れない」なんて言っていた愛だが、仲良くなっておかないとと思ったのか顔を真っ赤にしながら自己紹介をした。

「えっと、二宮蛍(ニノミヤ・ホタル)です!」
「四条葵(シジョウ・アオイ)です」

蛍と葵も後に続いた。

「ほら、結も自己紹介しなよ。すぐに皆寄ってくると思うから、今のうちにちょっとでも仲良くなっておかないと」
「そ、そうだね…」

実はもう自己紹介が済んでいる、なんて言えるはずもなく、ぎこちない自己紹介を済ませた。

「ねぇ、ライン交換しない?」
「…ああ」
「うぅ…イケメンすぎて辛い~!」

心の中の衝動を抑えられないと言わんばかりに蛍が席に座ったままのたうちまわる。

「…でも確かに、本当イケメンだよね…」

愛に小声でアカウントを教える颯を見ていると、心の声が漏れた。