「…ふっ…」

六角さんは鼻で笑うと、立ち上がった。

「アンドロイドを好きになる? 笑わせないで下さい。それとも何ですか? あなたはそういう趣味の方なんですか?」
「六角部長…!」

お父さんが爪が食い込みそうなほど拳を握る。

「三鷹係長、あなたもあなたです。全く、こんなことを聞くためにわざわざ時間を開けたのではありませんよ…」
「ふざけるな!」

私達と六角さんを隔てていたテーブルが音を立てる。隣で誰かが立ち上がる。六角さんの声を遮ったのは…私でも、お父さんでもなく、颯だった。

「…颯…?」

今まで無表情だった颯が、今は怒りに満ちていた。

「好きになったやつを引き止めて何が悪い! どうにかしたいって思って、自分の傍にいさせようとすることのどこが悪いんだ!」

六角さんは黙っていた。

「言え!」

颯が追い打ちをかける。

「颯、落ち着いて…」
「落ち着いてられるか!」

颯は私の手を振り払った。そして六角さんは、笑みを浮かべた口元を一瞬だけ動かすと、こう言った。

「好きになる相手が、生物ならまだしもアンドロイドだとは…果たしてこれを可笑しいと思わない者がどこにいると思いますか? え?」
「俺だ!」

間髪を容れずに、颯は答えた。