部屋のドアを閉めて、二人だけの空間を作り出す。

「…あのね、颯」

あたかも好きな人に告白でもするかのように、私は変に緊張していた。

「聞きたいことがあるんだけど…いい?」
「ああ」

私達は隣同士、ベッドに座っていた。

「あと一週間だけど…何時くらいに戻るの?」
「夜八時、らしい」
「…もし研究所に戻らなかったら、どうなるの?」
「俺はまだ試作機の段階だから、色々と不具合も多い。そこを直して完成形になるために戻るわけだが、それができないとなると、俺は永遠に試作機、他のアンドロイドから見れば不良品となる」

そんな自虐でも、颯は表情一つ変えなかった。

「時間になってもここにいたら?」
「さあな。そこまではプログラムにないからどうなると断言はできないが、恐らくはここまで押しかけてくるだろう」

颯に質問を重ねるうちに、だんだん悲しくなっていく私がいた。

思えば、颯を迎え入れた時、私は「何となく楽しそう」と、それだけの単純な意思だった。アンドロイドとの共同生活に、子供のようなスタンスで臨んでいた。

…でも、今は違う。

颯がいることが当たり前になり、颯と一緒にいる時間が日常のほとんどで、そして、颯と一緒にいたいという感情さえ芽生えてきていた。

「…離れたくない…」

涙交じりの震える声でこぼれた言葉を、颯が聞き逃すわけがなかった。