「ただいま~」

二人で家に帰るのも、もう当たり前になっていた。

「お帰り~」

お母さんの声が出迎える。

「そうだ、これ、保護者向けのプリント」
「うん。…えっと…?」

プリントをお母さんに渡す。その時、私は何気なく、キッチンの壁にかかっていたカレンダーを見た。それは何の変哲もないただのカレンダーだった。でも、見えないペンでタイムリミットが書かれていた。

「…はぁ…」

ため息が空気に溶ける。

「あと一週間か…」
「一週間? …ああ、俺が研究所に帰るのが?」
「うん…」

あの時、お父さんには「一ヶ月間だけ」と言われていた。その時は一ヶ月で別に何の問題もないと思っていたけど、今となってはその時の私の気持ちが嘘のようだった。

「結? …寂しいのか?」
「…うん…」

本人を前にして、気持ちをあらわにするのは恥ずかしかった。だけど今は、颯になら知ってもらっていてもいいと思っていた。颯がアンドロイドだからじゃない。むしろ私の目には、颯はアンドロイドとしては映っていなかった。

颯は、一人の人間としてそこにいた。少なくとも、私にとってはそうだった。

「…颯」
「どうした?」
「ちょっと…私の部屋、来てくれない?」

階段を上がる私を見て、お母さんはクスクスと笑っていた。

「ふふっ、結ったら、颯くんにあんなに懐いちゃって…」