「安心して眠れるまで、俺が見守る」

露骨に目が合って、しかもこんなに近い距離でこんなことを言われてしまったから、別の意味で目が覚めてしまった。

「全く…いつまでそんな調子なんだ、結は」

そしてさらに、颯は私を抱きしめた。

「ちょっ…ちょっと、颯…」
「熟睡して明日も元気に目覚めてもらわないと、俺の監視役が務まらないだろ?」
「それは、まぁ…」
「だから、寝てくれ。…何なら、子守唄でも歌おうか?」
「べっ…別にそこまでされなくたって!」

そこからは着実に睡魔が私を襲い、十五分もすると私は眠っていた。

夕方に抱きしめられたのと同じような安心感を、今も感じていたからだろうか?

それとも、ただの偶然で、睡魔のタイミングが丁度よかっただけだろうか?

どちらにせよ、私は颯の腕の中で眠っていた。それだけは、確かなことだった。

「…おやすみ」

その声は夢の中での声なのか、それとも実際の声なのかは分からなかった。

「…悪いことをしたな…三鷹にも、一条にも」

声は確かに颯のものだったけど、その喋り方は少し違っているように聞こえた。これも、この声が夢の中での声だからだろうか?

「別れたなら別れたって、言っておけばよかった…それなら今頃、こんなことには…」
「…颯…?」

そしてその声が現実のものだということに気づいた私は、せっかく遮られかけていた意識を呼び戻した。

「…何だ?」
「独り言、何言ってんの?」
「…何でもない」

その時は眠たかったし、ついそのままにしてしまった。でも、本当はもっと早く、その言葉について色々と聞いておくべきだったんだ…。