今日は式の当日だし、香奈達は明日のハネムーンの飛行機の時間も早いみたいだったので10時過ぎには飲み会はお開きとなった。

「七尾さん、もう1、2杯ホテルのラウンジで飲んで行きません?」

香奈と武田君を見送った後、朝日奈君が少し躊躇いながらではあったが、私に声をかけてきた。

「そうね、少しならいいわよ。そのかわり、お花見の時みたいに酔っ払わないでよ」

私は軽くイジワルっぽく笑って言った。

「その節はご迷惑おかけしました」

彼はぺこりと頭をさげながら、申し訳なさそうな表情を笑みとともに浮かべていた。


偶然というのは重なるもので、私達の泊まるホテルも、明日の帰りの飛行機の便も一緒だった。
朝日奈君と私は今日泊まるホテルのラウンジに向かい、夜景の見える席についた。

「それにしても仲良さそうなご夫婦ですね、武田さん達。うちの従姉妹の家庭もああいう風になってくれればいいんですけどね」

朝日奈君は微笑みながら言った。

「あの2人ね、大学の頃から本当に仲良くてね。そういえばね最初は香奈の方から好きになっちゃったみたいなのよ」

私は自分の言葉にあの頃のことを思い出した。
そういえば、武田君に言ったっけ、香奈が武田君のこと好きみたいだよって。
そしたら、武田君に言われた。

『ボクはアナタのことが好きなんです』
って。
武田君、正直その言葉はね、小学生の時に、私が転校する前に聞きたかったわ。

朝日奈君はカシスウーロンを飲みながら私に言った。

「でも、武田さんて、もうすっかり奥さんの尻に敷かれてましたね」

私はそれを聞いて思わず笑ってしまった。

「それはね、あのふたりが付き合い始める前からそうだったの。本当に昔かしから変わってないわ、あのふたり」