香奈と武田君は結婚式の後にもう一度食事に行こうと誘ってくれた。
忙しい時だろうに私なんかを誘ってくれるなんて、本当に友達冥利につきる。

私はホテルのロビーで香奈達が来るのを待っていた。

「あれっ?もしかして七尾さんですか?」

聞き覚えのある声に呼びかけられた。
視線を声の方に移すと、そこには朝日奈君がいた。

「あらっ?朝日奈君?どうしたの、こんなところで」

「あっ、やっぱり七尾さんだ」

そう言って彼はにっこりとメガネの奥の目を細めた。

「いとこの結婚式なんですよ。ゴールデンウイークにするもんだからおかげで連休なしですよ」

そう言って彼はさらに目を細めた。

「私も結婚式によばれてたの。大学の親友のね。なんか感動しちゃって、やっぱり結婚式はいいものね」

私も微笑んだ。

「そうですよね。ボクも柄にもなく感動したゃいました。普段貧相な従姉妹もウェディングドレス着たらキレイに見えたし。孫にも衣装ってやつでした、まさに」

朝日奈君は冗談めかして言った。

「ダメよ、朝日奈君、花嫁さんのこと悪く言ったら」

「そうですね。反省、反省。でも、きっと七尾さんが花嫁さんだったらスッゴくキレイなんだろうなぁ」

彼は軽い口調で言った。
その言葉に私は一瞬、自分のドレス姿を想像した。
そして私の隣には一也が……
急に胸がせつなくなったが、朝日奈君には悟らないように

「まぁ、お上手ねぇ。ん~褒めても何も出ないわよ」

と答えておいた。
彼は何かその後言っていたようだったが、私はもう一度一也のことを思い出していて、はっきりとは彼の言葉を聞いていなかった。


「お~い、里沙、お待たせ~。」

振り返ると香奈と武田君が並んで手を振っていた。