翌日、私はちょっぴり気合いを入れてイツキの家に向かった。
さてと、夕飯は何を作ってやろうかな。
昨夜、イツキとの電話を切ってからずっと、今夜のメニューについて考えていた。
悩みに悩んで、ミートソースのパスタ、デミグラスソースのオムライス、ビーフカレーのいずれかにしようと考えていた。
だけど、このうちどれにするかが決められず、結局朝までベッドの中で眠れない時間を過ごしてしまった。

で、いざスーパーで食材を買う段階でまだ悩んでいます。
ミートソースは、イツキ、トマト苦手だからなぁ。
でも、だからこそ、香奈さん特製の愛のこもったミートソースを食べてもらうのもアリだし。
オムライスは冷めちゃうといまひとつだからなぁ。
じゃあ、今回はパスということで。
カレーはイツキ好物だったなぁ。
でも、彼、激辛が好きだけど、私、甘口しか食べられないし。
うん、ナシね、カレーは。
と、いうことで、今夜のご飯はミートソースのパスタに決定しました。

私は、真っ赤なトマトと挽き肉、それに玉ねぎと麺と小麦粉を買ってイツキの住むマンションに向かった。
当然のようにイツキはまだ、仕事から帰ってきておらず、今のうちから夕飯の下拵えに取りかかることにした。
まず、トマトを柔らかくなるまで塩茹でして、その間に玉ねぎをみじん切りにした。
茹で上がったトマトをザルで漉してペースト状にして、炒めた挽き肉と玉ねぎに混ぜ、多少の塩胡椒で味付けしながらじっくりと煮込んだ。
そして、トロみをつけるたもに小麦粉を少し追加して、だいたいミートソースは出来上がった。
ちょっと味見してみる。
おぉ、我ながら完璧!
あとは、イツキが帰るのを待って麺茹でればいい。
そんなところに、イツキから電話がかかってきた。

『もしもし、香奈さん?もうじき、家に着くんだけど、今、ボクんちにいます?』

「うん、今、夕飯の支度が終わったよ。ナイスタイミングだよ、イツキ」

私の言葉に、彼は少し申し訳なさそうに言った。

『香奈さん、ゴメン、あと5分で家に着くけど、バレー部の生徒が3人程付いてくるんで、本当ゴメン、少しだけ彼女たちの相手してくれないかな?』

「どういうこと?」

『えぇとね、要はボクの彼女さんに会いたいそうなんです。面接とか言ってやがるよコイツら』

イツキの近くからキャッキャ騒ぐ女の子たちの声が聞こえた。

「イツキ、モテモテですね。いいわよ、大人の女の実力を見せてあげるわよ」

『あのぅ~、香奈さん、子供相手にそんなにムキにならなくても』