渋滞にハマったおかげで香奈さんの家に着いたのは夜の9時をまわっていた。
朝早起きして、丸1日運転して、滅茶苦茶スワンボートを漕いだりしたりしたもんで、さすがにボクも疲れた。
でもその間、ずっと香奈さんと一緒にいれたので気分はとてもよかった。
しかも、また明日の香奈さんの誕生日にも1日中、香奈さんと一緒に過ごすことができる。
ホント、この上なく幸せだ。

「イツキ、お疲れ様。ありがとうね。ホント楽しかったよ」

香奈さんは大きな目を細めながら言った。

「ボクも楽しかったッスよ。ずっと香奈さんと一緒にいられて嬉しかったし」

「イツキ……」

彼女はボクを上目づかいで見つめ、はにかむように微笑んだ。

「じゃあ、また明日ね。大した物買ってあげられないかもしれないけど、ちょっとは期待に応えられるようにしますよ。それと、たまにゃ贅沢な飯でも食いに行きましょうね」

と、告げボクはバイクに向かおうとした。

「イツキ、待って。少し上がっていってよ。疲れたでしょ?」

香奈さんはボクの手を取って引き留めた。

「確かにちょっと疲れたかな。じゃあ、甘いコーヒーでも淹れてもらえます?」

「うん、わかった。お砂糖たっぷりのカフェオレ作ってあげるわ」

彼女はボクの腕に手を絡めて微笑んだ。
彼女の家に上がり、リビングでくつろいでいると、

「はい、お待たせ」

と、言って香奈さんはマグカップを2つ持ってきた。

「ありがとう」

ボクは香奈さんの淹れてくれたカフェオレを受け取り一口飲んだ。
甘味がホンノリ口に広まり疲れた体を癒やしてくれた。

「香奈さん、美味しいよ。ホント疲れとれそうですよ」

ボクは優しく微笑みかける彼女を見上げた。