香奈さんを助手席に乗せて、ボクはハンドルを握った。
府中インターから中央道に入り山梨方面へ向かった。
朝早く出たつもりだったが、元八王子バス停付近で軽い渋滞にハマった。

「ありゃ、渋滞してんのね。みんなどこに行くのかしら?」

「時期がいいから、紅葉狩りとかじゃないっスカね。天気もいいし。もうちょっと先行けば道路からも紅葉見えますよ」

「ふ~ん、渋滞やだなぁ。着くの遅くなっちゃうし」

「ボクは渋滞そんな嫌いじゃないですよ。香奈さんが隣にいてくれるならね。ひとりだったらムダにタバコ吸ってイライラしてるだろうけど」

「イツキ、もう、バカ」

「な、なんでそこでバカなんスカ?」

と、言ってボクは吹き出した。
彼女も笑いながら言った。

「ホント、イツキってクサい言葉よく言うよね」

「ひっでぇなぁ、香奈さん。じゃあ、今後は憎まれ口しかききませんからね!」

そう言ってボクはタバコに火をつけた。

「イツキく~ん、イジケないでよぉ。まったくお子ちゃまなんだから」

彼女はからかい口調で言った。

「えぇ、どうせ明日になってもボクはハタチのままの、お子ちゃまですよ」

と言ってボクは舌をだした。

「なにコイツ、ホントにムカつく~」

しばらくの沈黙の後、ボクらは同時に吹き出した。

「そうね、イツキの隣なら渋滞も悪くないかもね」

彼女はまぶしそうに微笑んだ。
その笑顔は、ボクの胸をキュッと締めつけた。

渋滞もやっと解消し、再び順調に車を走らせることができるようになった。
ボクらは談合坂のサービスエリアでちょっと休憩をとり一路、本栖湖へ向かった。