ボクは自分の目から涙が流れ落ちるのを感じていた。
きっと、みっともない顔をしているんだろうな、ボク。
でも、香奈さんもひどい顔をしているし、お互い様かな。

「香奈さん、ボクね、ん、さっきの香奈さんの言葉のあとに言うのは、なんか後出しジャンケンみたいで、ズルいとか、カッコ悪いとかって思うかもしれないけど、ボクは香奈さん、香奈さんが、す、好きです」

ついに言えた。
自分の気持ちを口に出して、彼女に伝えることができた。
決して格好良くない、いやむしろ最高にカッコ悪かったかもしれないが、気分は清々しかった。

「イツキの………バカ」

そう言って香奈さんはボクの胸に顔を埋めてきた。
ボクは、そっと彼女を両手で抱きしめた。

「香奈さん、ゴメンね、ホント」

そして続けた。

「あの雨の晩からしばらく会わなかったでしょ?その間ホント苦しくて、寂しくて、香奈さんに会いたくてしかたなかったんだ。自分の気持ちにその時、気付いたんだ。先にキスしちゃったから順番は逆だったけど」

「なんだソレ、わたしゃね、実はアンタに勧誘で声かけた時、一目惚れしちゃってたんだけどね」

香奈さんは顔をあげてクシャっと笑った。

「その頃、ボクは里沙さんに一目惚れしてましたけどね」

ボクは冗談ぽく言った。

「でもね、今は香奈さんしか見えないんです。ホント昨日は、なんにも考えることができないくらい落ち込んでたんすよ。まぁ、ボクの早とちりってか、勘違いのひとり相撲だったんスけどね」

彼女を見つめながらボクは言った。