ボクは自分がミジメになって、これ以上、香奈さんの言葉を聞きたくはなかった。

「イツキ、お願い、最後まで私の話聞いて、お願い………」

彼女はすがるようにボクを見た。
ボクは心なく虚ろに頷くのが精一杯だった。

「私ね、断ったの」

香奈さんの言葉にボクは目を見開いた。

「えっ?」

ボクは驚き彼女の瞳を見据えた。

「彼、驚いてたけど、だって、2年以上もなんの連絡もよこさないでさ、いざ帰ってきたから、また付き合おうなんて、都合よすぎない?確かに、昔は彼のことは好きだったし、夢中だったわ。でもね、今は私、別に好きなヒトいるの」

香奈さんの大きなタレ目は再び涙に濡れていた。

「ついつい、憎まれ口ばっかそのヒトにはきいちゃうんだけどね、そのヒトね、私が寂しい時とかに飲み行くの付き合ってくれたりね、バカ言って笑わせてくれたり、入院した時なんかは私の為に花束持ってきてくれたりもしたんだから」

彼女の瞳からはとめどなく涙が流れ落ちていた。
でも、鼻を真っ赤にしながらも一生懸命微笑もうとしていた。

ボクの言葉を待っている。
いくら鈍感でバカなボクでも『そのヒト』がボクだということはわかった。

「香奈さん、ゴメンナサイ。ボクの、ボクの間違った思い込みでアナタを傷つけてしまった。そしてツラい思いをさせて泣かしてしまった。本当にゴメンナサイ。そして、アリガトウ」

ボクの目もいつの間にか涙が溢れ出しそうになっていた。