「イツキ、、私の話、聞いてくれる?」

涙で赤くなった瞳でボクを見ながら香奈さんは言った。
ボクはコクリと頷き彼女の瞳を見つめた。
いよいよハッキリとフられちまうな。

「イツキ、彼ね、私がアメリカにいた頃、付き合っていたヒトなの」

香奈さんは訥々と語り始めた。

ほら、やっぱりそうか。
はぁ~、春からフられてばっかりだなボクは。
まぁ、しゃあないか、素材がボクだもんな。

「彼、私より2つ上で向こうの大学を卒業して最近日本に帰ってきてたの」

ハハハ、向こうの大卒か。
ボクなんか太刀打ちもできんわな。

「私がね、日本に帰る時に一応お別れはしていたの」

でも、あれか、日本に帰ってきたからもう一度やり直すってか?
これ以上は聞きたくないよ。
ミジメなことこのうえない。

「でね、ちょっと前に会いたいって連絡あってね、昨日会ってきたの」

で、お互い再会に感動して昔の日々を思い出してってことですな?

「そしたら、彼にもう一度付き合ってほしいって言われたの」

ボクは立ち上がって香奈さんの言葉を遮った。

「も、もういいですよ。そ、それ以上言わないで下さい。よかったじゃないですかぁ。有望なヒトと再会できて。おめでとうございます。香奈さん、これ以上、ボクにミジメな思いをさせないでください」