「いらっしゃいませ」

乾いたカウベルの音の後に現れたのは、黒髪を束ねた里沙さんと、髪をバッサリと切って少年みたいな印象を与える香奈さんだった。
正直、香奈さんの髪型にドキッとした。
だって雰囲気があまりにも違うし、なんか香奈さんの髪型はどことなく高校時代の麻貴子をボクに思い出させた。
ただ、イイ、なんかホント、すごくカワイイ!

「里沙さん、香奈さん、来てくれたんですね。ありがとうございます。それにしても香奈さん、思い切ったイメチェンですね」

ボクは平静を装って話しかけた。

「へへっ、どうかな、似合うかな?」

香奈さんは照れながら訊いてきた。

か、カワイイ……

「似合ってますよ。ボクねぇ、ショートカットの娘で飯3杯食えますもん。ショート最高!」

ボクは笑いながら軽口をきいた。
実は内心ヤバすぎるくらいテンパっていたのだが。

「べ、別にアンタのためにショートにしたわけじゃないもん」

香奈さんはドモリながら必死に否定していた。
元々小顔で黒目がちの大きなタレ目がショートヘアーで更に際立っている。

「あら?香奈、武田君の前の彼女がショートだったから対抗したんじゃなかったの?」

里沙さんはイジワルっぽく笑いながら言った。

そ、そうなのか??

努めてポーカーフェイスを装っていたがそろそろ限界に近かった。

「おーい、バイト君、このキレイなお嬢さん達はどちら様なんだい?」

店長が紹介しろと言わんばかりに話に入ってきた。

店長、ナイス助け舟!