「麻貴子、ごめんな。ツラい思いさせてたんだな」

ボクは彼女の涙に言葉が詰まってしまったが続けた。

「たださ、麻貴子の決断が正しいかったかどうかなんて、きっと年取って死ぬ時まで誰にもわからないんじゃねぇかな。オマエが後に後悔のない素晴らしい人生だったって振り返ることができりゃ正しかったってことじゃねぇかな?ハハハ、なんだか自分でもよくわかんねぇこと言っちまってるけど、それで今後の麻貴子が幸せになるならそれでいいんじゃねぇかなぁ?それとさ、ひとつ言っとくけど、ボクは少なくとも麻貴子のこと、嫌いになんかなってないからな。ボクも同じだよ。麻貴子に嫌われてフられたんじゃないって思えれば、気も楽になるよ」

「樹君、ほ~んと、変わってないね。キミの言ってること、少しわかる気もする。フフフ、そうね、樹君が歩む人生よりも、私の人生はよりいい人生だったって思えるように生きてくよ。悔しいからね」

彼女は小鼻にシワを作りボクに微笑みながら言った。

「そうだな」

ボクも微笑み返した。
ボクらはここで別れることにした。

「樹君」

「ん?」

「へへっ、樹君今、好きな子いるでしょ?どんな人?」

「んん?」

不意の問いにボクは戸惑った。

「あぁ~ヤッパリ言わないで、悔しくなるから、いいもん、私も彼氏、早くみつけちゃうから。逃がした魚はデカかったって、樹君に後悔させちゃうからね。じゃあね」

彼女は優しく微笑み小走りに去っていった。


麻貴子……
アリガトウ

そして
サヨナラ………