翌日、ボクはバイクで中野さん達の車を先導して観光地巡りを始めた。
まずは冬場はスキー場になる高原に行き、リフトに乗り山頂まで行ってみることにした。
香奈さんは高いところが苦手らしくリフトが5メートルも地上から離れるとギャーギャー騒いでいた。
「香奈さん、高所恐怖症なんだ。情けねぇ」
ボクは笑いを堪えるのに必死だった。
「イツキ、アンタホントにSだね。超ムカツクー!」
香奈さんはマジ切れ寸前の状態でボクに文句を言った。
そして顔をほぼ泣き顔に近い状態にして里沙さんに訊いた。
「ねえねえ、里沙、アンタは高いとこ平気なの?」
「私?平気よ。風が涼しくて気持ちいいし、景色も綺麗だし」
そう答える里沙さんの綺麗な黒髪は風にそよいでいた。
「香奈さん、これで怖がってちゃ、午後やばいよ」
ボクは笑いながら憎まれ口をもう一発お見舞いしてやった。
山頂からは八ヶ岳など周りの山々を一望することができた。
中野さん夫妻はデジカメでアチコチ撮っている。
香奈さんは足が地につきやっと落ち着いた様子だ。
里沙さんは遠くを見つめながら相変わらずの優しい笑みを浮かべている。
やっぱり里沙さんキレイだなぁ。
そんなことを思いながら、つい見惚れてしまった。
ボクらは山を降りて次の目的地に向かった。
森の中の道を進み、一軒のログハウス風のレストランに入った。
森の奥からはカッコウの鳴き声が聞こえる。
ボクと中野夫妻は鱒のムニエルを、香奈さんと里沙さんは若鶏のソテーを注文した。
木々に囲まれたテラスで食べる飯ってのはどこか気分をよくするらしく、運転手の中野旦那さんとボクを除き女性陣はワインなど飲み始めていた。
「中野さん、帰ったらボク達もワイン飲みましょうね」
「そうだな、武田君、ぜひお供頼むよ。あぁ~、ハンドルキーパーはツラいねぇ」
お互いタバコに火を点けつつ苦笑いした。