「今の発言って、七尾さん、武田さんの事が好きだったってこと?」

朝日奈君は私の沈黙の間に問いかけた。

「もしかしたらって可能性の話よ。自分でもよくわからないけどね。ただ、香奈と武田君が付き合うって聞いた時は本当に嬉しく思ったし、今日の結婚式だって自分の事のように嬉しかった。だから、きっと、多分、う~ん、よくわからなくなっちゃった。でも、さっき言ったように、やっぱり武田君の隣に香奈がいることが一番自然だと思うわ」

私は、自分で言いたいことを上手く言葉に出来ないことが歯痒かった。

「でも、今まで七尾さんでしたら、色々言い寄る男性もいたでしょう?」

「うん、そうね、何人かいたけど、全部お断りしちゃった。やっぱりまだ、そういう気持ちになれなくて、ね」

「そうですよね。話戻っちゃうけど、気持ちに整理つかないと、そういう気持ちって起きませんよね」

彼はグラスを傾けながら同意してくれた。

「そうね」

私達はもう一杯づつドリンクを頼み、あとはとりとめない話をしてラウンジを後にした。

「朝日奈君、なんか色々と変な話に付き合わせちゃってごめんなさいね」

「僕こそすみません」

「あっ、また謝った」

私は彼に笑いかけた。

「ハハハ、ホントだ。ところで七尾さん、明日の帰りって同じ飛行機でしたよね?よろしければ明日も、ご一緒いただけませんか?」

朝日奈君は少し照れくさそうに私に言った。

「いいわ、じゃあ明日10時にロビーで」

「ありがとうございます。では、明日10時に。じゃ、おやすみなさい」

彼はそう言って軽く手をあげて背中をむけた。

「おやすみなさい」

私もそう言って部屋に向かった。