私は、ずっと誰にも言えずに心に溜め込んでいたことを朝日奈君に吐露してしまった。
香奈や武田君にさえ言えなかったことなのに。
香奈達だと寧ろ関係が近すぎなのかもしれない。
だから、朝日奈君だったのかも。
それに同じ痛みを知っているし。
同類憐れみあうってことなのかな。
お酒のせいもあるかもしれないけど。
それに香奈達は今日から夫婦だし、そこには、友達ってだけじゃ入り込めない壁みたいなものを感じてしまう。
もちろん、香奈達にそんなつもりはないんだろうけどね。
なんか私の方から少し遠慮しなきゃって。


「朝日奈君、こんな事訊くの悪いけど、やっぱり朝日奈君もその日以来、好きになった人っていないの?」

「そうですね、綺麗だなとか、かわいいなって思った人は沢山いましたけど、本気で、恋愛の対象としてみた女性はいませんね」

彼は苦笑いのように言った。

「七尾さんはどうなんです?」

「私、どうだったのかなぁ。自分でもよくわからないわ。昔ね、まだ香奈と武田君が付き合い出す前にね、武田君から好きって言われたことはあったの。でもね、その頃ってまだ彼が亡くなってから一年も経ってなくて、とても武田君の気持ちに応えることは出来なかったの。でもね、私、小学生の頃は武田君のこと好きだったんだ。もちろん、過去にタラ、レバって言っても仕方ないけど、もし、もう少し時間が経ってから武田君にそう言われてたら、違っていたかもしれないって思ったことはあるの。でも、今日の結婚式を見て、やっぱり武田君は香奈の隣が一番しっくりするって改めて思ったから、結果的にはその時、彼の言葉を受け入れなくて良かったんじゃないかな。あっ、今の言葉、香奈と武田君には絶対秘密だからね」

私は朝日奈君に強く念を押した。