「クラスメート」
間違ってはいない。
間違ってはいないが、何か物足りない回答だ。
「芦矢楓っていうの、私の名前」
「そうなんだ」
「覚えてね」
「わかった」
そこで会話が途切れた。
柏木くんが放置するように視線を逸らした時点で強制終了とされる。
私は鞄から筆箱やら手帳やらを取り出しながら、然り気無く横目で隣人の様子を窺う。
ここ1週間の私の習慣だ。
柏木くんはいつも自分の席でひとり読書をしている。
彼の読んでいるが日によって変わるということは、本のタイトルと大きさで分かる。
頁を捲る間隔は特に早くは感じられないのに、朝は表紙から捲っていた本が、放課後には巻末まで到着している。
例えその本が国語辞典と同等の厚さであってもそのペースは変わらない。