Indifference






そう言いながら、どこか煩わしそうに、困ったようにがしがしと両手で頭をかきむしる。


不意に空いた右手を慰めるように、冷たい風が撫でていく。



「楽なんだよ」



ばらばらばらばら。


紅葉の雨に降られる中、ぽつりと声が落とされる。



「何も考えないで生きてると、心が軽くなる」



人は果たして他者への関心をなくして生きていけるのだろうか。


その答えとしてはイエスだろう。



世の中に無関心でいたところで生活の中には特に支障をきたさないし、むしろ関心がない分リスクを冒す機会にはまず出会わない。


柏木くんのように何も考えずに何となく日々を過ごして、クラスメートの名前はおろか隣人の顔を覚えることもなく、自身の好みも分からず。



でもそんな色褪せた、味気のない世界なんて、きっとつまらない。



「でも私、柏木くんのことが知りたい」



こちらを振り返った柏木くんは相も変わらず無表情だけれど、その口角がやんわりと上がっているのを、私は見た。



「変わった人だね」



無関心に塗りかためられた世界を、私は。