相変わらず私を関心の対象に入れてくれない柏木くんの態度に、私は肩を落とすべきところだろう。
だけどそんなことよりも、私は木々を見上げる彼の表情に視線を奪われていた。
教室でひとり読書をしているときや、私に話し掛けられて曖昧な返事を返すときとは打って変わっていた。
常に抑揚のなかった瞳が、色味が孕んでいるのだ。
柏木くんは関心の有無が驚くくらいに分かりやすい人なんだと思った。
「柏木くん」
「……何」
やや間をおいて、私の質問に対して質問が返ってくる。
その視線は上を向いたままで、まるで私の姿は彼の視界には映っていないようだ。
触れる体温はしっとりと熱いのに、意識を向けられないことって、こんなにももどかしい。
「柏木くんって、好きなの?」
「何が」
「何って、えっと、紅葉」
「多分」
「え?」

