よかった。
篤史の姿が見えなくなるとホッとして胸を撫で下ろす。
あ、お礼しなきゃ。
パッと顔を上げると永瀬君は篤史とは反対の方向へ去っていく。
「ま、待って!」
私は慌てて呼び止めた。
永瀬君は立ち止まって振り向いてくれたけど、その顔は面倒くさそうにしている。
「あの、……ありがとう」
「……あぁ」
そう一言だけ言って永瀬君は行ってしまった。
クラスメイトとこんな形で話す事になるなんて、私は夢にも思っていなかった。
でも一つだけ言えることは、普段の彼だけで性格を判断しちゃいけないんだ。
この時から私の中で永瀬君は『いい人』の代名詞がついた。
「……こ、りこ、莉子ってばぁ!」
「えっ!?な、何?」
理乃の声でハッとする。



