彼も学校帰りだろうか、学ラン姿だった。
篤史とは対照的に全く表情を顔に出さないので、整った顔が一際際立っている。
それが篤史の癇に障ったのだろう。
「誰だお前。関係ないやつは引っ込んでろよ!」
篤史の怒りの矛先が私から永瀬君へと向かったらしい。
彼に殴りかかろうとする。
「やめ……」
私が止めようとした時だった。
永瀬君は向かってきた篤史の右腕を持ち、背中にひねった。
「イテッ!くそっ、離せ‼」
永瀬君は見事に篤史を動けなくさせた。
……す、凄い。
私はその風景を見つめることしかできない。
「もう、森崎に近づくなよ」
そう言って手を離した永瀬君。
篤史は自分の手が解放されるとまだ何か言いたそうだったけど。
道の真ん中で揉めていたせいか通行人の視線が増え始めたため、チッと舌打ちをして走って逃げていった。



