私は石橋さんに聞き返した。



「永瀬くんって陸上部のエースだよ」



ぱちくりと、理乃と二人で顔を見合わせる。



「えぇー‼陸上部入ってたの?」


つい大きな声で叫んでしまい皆の注目を浴びてしまった。

恥ずかしくなって三人で窓際の方による。



まさか颯が陸上部に入っていたなんて。

いつも遅刻とか屋上にいたりしていたし、てっきり帰宅部だと思っていた。


理乃も同じ気持ちなのだろう未だに眉間に皺が寄っている。


石橋さんは私たちの顔を見てクスッと笑った。



「無理もないよ。だってほとんど部活に顔出さないもの。
練習しなくても速くて……彼には才能があるのよ」


石橋さんの顔は少しせつなそうだった。


石橋さん?

なぜか私は石橋さんの表情が気になった。



「本当は部活出てほしくて誘ってるんだけど、なかなか……ね」


「そうだったんだ」


私たちはそれ以上何も言えなかった。