先程まで教室掃除の生徒がきちんと並べていたので、引かれたままの永瀬君の椅子と机は他の生徒の机よりも目立っていた。
久しぶりに話したかも。
なんて永瀬君が出ていったドアを見つめながら思っていると、
「相変わらず無口なやつ。莉子、よく話しかけたよね」
理乃が腕を組みながら私を尊敬の眼差しで見てくる。
「そんなこと言わないの」
「だっていつも一人でいるし、遅刻・早退なんてしょっちゅうじゃん。何考えてるかわかんないっていうか」
理乃が思い出すように今まで自分が見てきたことをありのまま話す。
確かにそうかもしれないけれど……
「永瀬くんはちょっとぶっきらぼうなだけなんだよ」
「そうかぁ~?」
そうだよ。
永瀬君はいい人だよ。
私は今でも覚えてる。
あの日――……



