これに乗ってしまえばここにはもう帰ってこれない。
やだ、私ってば……
今になって後悔してる自分がいて、無意識に立ち止まる。
もう一度抱き締めてほしかった。
莉子って呼んで笑ってほしかった。
「颯っ……」
我慢していた涙が頬を伝う。
その時、
「――……っ」
え?
誰かに呼ばれたような。
辺りを見回すけど私に見向きもせず通りすぎる人ばかり。
聞き間違いだと思って歩きだそうとしたら、
「莉子ーっ‼」
……どうして?
……何で?
今度こそはっきりと聞こえる。
ロビーの騒つきの中で彼の声だけが私に届いた。



