嫌な想像がどんどん膨らんでいく。
今までの幸せが嘘のように記憶から消えていくようだった。
「私の事、いらなくなった?」
「違う!違う、けど……」
振り向いた颯はすごく辛そうで悲しそうで。
私がこんな顔をさせてしまっているんだと思うと、泣いてはいけないような気がして唇を噛んで俯いた。
近づいて来た颯の影で私の目の前は暗くなる。
「もう莉子には何もしてやれない」
放たれた言葉は私の心を深く抉るものだった。
そのまま颯は私を通り過ぎて去ってゆく。
「……っ」
視界が歪む。
今度こそ堪えきれなくなって流した涙が地面を濡らす。
私が泣いても戻ってくる気配はなかった。
もう涙も拭ってはくれないんだ。
もうあの笑顔を私に向けることはないんだ。
そう思うと苦しくて。
崩れるように膝をついて枯れるまで泣き続けるしかなかった。



