オドオドしているせいか逆にこっちが気を遣ってしまう。
「私に何か用でもあるんですか?」
私の声に一瞬声を出そうとしたけどつぐんでしまい、キョロキョロ周りを見回した後に『こっちです』と裏の方へ私を引っ張っていく。
人気がないのを確認するとやっと彼女は話し始めた。
「私、坂野と言います。
あの……実は、永瀬クンから言付けを頼まれて。誰にもバレないように森崎さんに伝えてほしいと」
「颯が?」
「はい。『決勝前に大事な話がある。建物の突き当たりに今は使われていない部屋があるから来てほしい』って」
何で?さっきまで一緒にいたのに。
それに颯はなぜ坂野さんに頼んだのだろう。
何となく疑ってしまう。
それが伝わったのか、坂野さんは私の目を見て真顔になる。
「私は偶然あの人たちの輪にいただけです。学校も違います。
それに永瀬クンとは中学校が一緒だったから見に来ただけなんです」
「……そうだったんだ。疑ってごめんなさい」
「いえ。怪しいと思うのはもっともですから」
言っている事が正しく思えて素直に謝る。