「手、冷えてる」
「手袋忘れちゃったんだ。でも平気だよ?」
私は慌てて手を放して両手を擦った。
颯は何か言いたそうで、でもどう切り出そうか悩んでるみたい。
でも今は暗い雰囲気になりたくない。
デートなんだから一番の思い出になるくらい楽しみたいよ。
「颯はどこに連れてってくれるつもりだったの?」
「あぁ、臨海公園。でももう今からじゃ……」
「いつまでもここにいてもしょうがないし、行こう!」
「お、おい!?」
「ほら早くっ!」
私は有無を言わせず颯の腕を掴んで歩きだした。
電車の乗車時刻まで時間があったため、軽く昼食をとった私達は臨海公園に向かった。
電車に揺られること二時間。
景色はビルの街並みから一転、真っ青な海へと変わっていく。
電車の中では常に私が話しまくっていたので颯は驚いていた。
「うわぁ~!きれーいっ‼」
あまりにもキレイすぎてついはしゃいでしまう。
子供のように手摺りまで走った。



