正月の予定は特に無いって言ってたから、人込みが嫌いなのはわかっていたけれど思わず口から言葉が出てきた。
颯はそういう事しなそうだし、私から行動を起こしていかないとダメだ。
やっと口説き落としてのOKだったから昨日なんか全然眠れなくて。
今朝だって可愛いって思われたくて、着物も来て髪だっていつもはしないアップで仕上げてみた。
その結果が吉か凶かと言えば颯の反応を見れば一目瞭然だろう。
はぁ、と颯にわからないくらいのため息を吐いて遅れないように追いかけたけど、人混みと不慣れな下駄での歩きに見失いそうになる。
ーーギュッ
……へ?
「遅れんな」
そう言って颯は私の左手を握って歩きだした。
しかも今度は私の歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれている。
どうしよ……凄く嬉しい。
外は寒いはずなのに私の頬は赤く染まり手は熱が帯びていく。
私はもう顔が上げられなくて、そのまま颯に引かれるように歩いた。



