「……悪い」
私が怒ったのを見て颯は申し訳なさそうに謝った。
その言葉にはっとしてつい俯いてしまう。
「別に謝ってほしいわけじゃないよ。ただ、あんなに濡れていたし気になっただけだから」
私の悪い癖かもしれない。
颯にだって言いたくないことの一つや二つはある。
人のプライバシーを詮索しちゃいけないよね。
「……貸したんだ、傘。店の前で困っている人がいたから。別に言うほどの事でもないかなと思って」
そう、だったんだ。
「ごめん」
「や、悪いの俺だし気にすんな」
「うん」
大変だったのは颯なのに、私を気にしてちゃんと理由を教えてくれる。
怒らなくても必要があれば言ってくれる。
私はそれを信じて待てばいいんだ。
それにしても傘を貸すなんてやっぱり優しい人なんだ。
自分のことよりも相手の事を考える颯を見習おうと思った。



