テスト最終日。


空は真っ黒な雲に覆われ大粒の雨が降りしきる中、それは起こった。







「なんだ、永瀬はまだ来てないのか?」



テストを配り始める直前、空席となっている席を見て先生が呟いた。



そう、もうすぐ開始の鐘が鳴るのに颯の姿が見当たらない。



どうしたんだろう。



「永瀬何で来ないんだろうね」



テスト用紙を配っている先生の目を盗んで理乃がこっそり話しかける。


でもその言葉に返事をすることさえできなかった。



私は気が気じゃない。


だって一つでもテストを受けられなければ颯は留年してしまうから。



それにただでさえ一限は颯の苦手な国語なのに。


隣の席を見つめながら拳をギュッと握り締めた。



早く来て!お願い!







ーーキーンコーンカーンコーン


そんな願いも虚しく始まりのチャイムは鳴ってしまった。