「森崎が引き受けてくれるならいいんだ。永瀬に拒否権はない」
「なっ!」
「じゃあ、今日からしっかり教えてもらえよ。俺はこれから職員会議だから」
反論しようとした颯を遮って先生は話を終わらせてしまった。
職員室を出ると廊下には人気はもうなく、中から聞こえる先生たちの話し声だけだった。
どうしよう。私これからどうしたら……
「はぁ、そんな顔すんなよ」
「え?私なんか変な顔してる?」
「違くて……まあ、いいや。こうなったら教えてもらおうじゃん」
「でも……」
颯は私を追い越し教室に向かって歩きだす。
夕日に照らされて長い影がゆらゆらと揺れている。
「よろしく頼むよ、莉子センセッ!」
静かな廊下に颯の声だけがこだまする。
こうなったらやるっきゃないか。



