――……あの日、結局告白できずに帰った。


私と颯が最後に交わした言葉は『ばいばい』と『あぁ』。




でも、あの日から確かに二人の距離は縮まっていた。


……と思う。





だって、だってね?


前よりもたくさん話してくれるようにもなったし、部活のない日は二人で屋上にいることが日課になって。



たまにだけど笑ってくれるようにもなったし、少しずつだけど心を開いてくれるようにもなってきた。



だから、もしかして颯も私のことを好きなんじゃないのかなって期待してしまう。



でも、そんな心地よい距離を壊したくなくて私はあれから告白できずにいた。









「朝から通行人の邪魔だゾっ!」


ーーバコッ



「いたッ!?」




頭に大きな衝撃が走って、振り向くと理乃が仁王立ちして立っていた。


理乃が手にしている鞄を見て、初めてそれで叩かれたことに気づく。