秋になり周りの山は徐々に茜色に染まってくる。
半袖だった服も秋の訪れとともに長袖を着る人が増え始めていた。
私は夏の雰囲気とは違って、涼しくなってくる一日一日を感じながら過ごすのが何とも言えない。
ここは都会じゃないから窓から景色を見ていると静かで落ち着くし、この風のニオイが好きだった。
「なーに物思いにふけっているのよっ」
「痛ッ‼」
放課後のんびりしながら自分の席に座っていた私は我に返る。
頭をコツンとグーで叩いてきた本人の顔を見るために目線を上へ上げると、仁王立ちした少女が見えた。
「なんだ、理乃か」
嶋谷理乃は私の一番の友達。
背が高くて活発そうなショートの髪にくりっとした大きな目。
私の自慢の親友だ。
「別に。ただ景色見てると落ち着いた気持ちになれるんだよね」
また外に目を向けてぼんやり話す。
私達の教室は三階だから見晴らしもまあまあいい。