気がつくと出入口まで来ていたらしい。
私の他にも帰るために出入口に向かう人がちらほらいる。
乱れた息をととのえながら冷静になろうと深呼吸した。
はぁ……大分落ち着いてきたみたいで頭の中がクリアになってきた。
ふと、自分の手に目をやる。
「ない……」
さっきまで持っていたはずの紙袋がない。
あの時びっくりして、つい落としてきたのかも。
どうしよう、返さなきゃいけないのに。
でも、二人の所へは戻れない。
ううん、戻りたくない。
だけど行くしかない。
私は意を決してさっきの場所へ戻ることにした。
「……ないなぁ」
私は自分が来た道を探しながら戻っていた。



