私は無我夢中で走っていた。
冷たい空気を吸い込むだけで喉が痺れ、頬が赤みを帯びていく。
すれ違う人すれ違う人が私を不思議そうに眺めていた。
でも今はそんなの全然気にならない。
さっき見て思い知った。
私の知らない颯。
真穂さんに恋している颯。
私が入る隙なんてこれっぽっちもなかったんだ。
「……ック、ふぇっ……」
溢れだした涙は私の気持ちとリンクして後から後から溢れてくる。
一度決壊した涙を止めることなんてできない。
どうして好きになっちゃったんだろう。
苦しくて、苦しくて、苦しくて……
この行き場のない気持ちをどうしたらいいのかわからない。
ズキン、ズキンと痛みだす胸をギュッと掴んだ。
お願いだから、
誰かこの痛みを止めて……



