私は肩にかけてあった学ランを永瀬君に返した。



「森崎が気にすることじゃない」


特に表情を変えることなく手渡された学ランに袖を通す。


私と話していてもつまんないのかな、なんて思ってちょっと寂しくなった。



そんな私に気づかず永瀬君はさっさと屋上を出ていこうとしている。


そのまま何も言わずに後ろ姿を見つめていると、こちらを振り返った。




「……?なぁに?」


「部活行かなくてよかったのか?」




……ハッ、ヤバい!


その言葉で自分が部活中だった事に気づく。



「練習中だったの忘れてた!」



慌てて永瀬君の横を通り過ぎて階段を降りようとしたけど、途中で振り返って手を振った。



「永瀬君またね」



一瞬目を大きくさせる永瀬君。


そんな彼にお構い無く、私はそのまま急いで体育館へ向かった。








「……変なやつ」


そんな永瀬君のつぶやきは私の耳に届かなかった。