「何で彼女作らないのか知りたい?」
「えっ……な、なん、で?」
聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちを抱えたまま、ゆっくりと顔を上げてなんとか声を発した。
夕暮れの風が頬をなで肌寒さを感じ始めている。
もう周りには人がちらほらいるぐらい。
二人の間にはしばらく張り詰めた雰囲気が流れた。
あれ?
じっと見つめていると、圭太の後ろに見覚えのある顔が見えた。
その人は私がよく知る人物で。
驚きと戸惑いで一瞬呼吸を忘れた。
「そ、う?」
間違いない。
そこには颯がこっちを見て立っていた。
休日のためか私服姿でいる颯を初めて見る私は、制服とはまた違う姿にドキッとする。
私の声に反応して圭太も後ろを振り向いた。
「颯……」
颯の目線は私たちの目を見ているわけじゃない。
もっと下。



