私の声に反応して振り返る。
颯は何かを感じとったのか、黙って傍にあった椅子に腰をかけた。
「いつもありがとう。それと迷惑ばっかりかけてごめん。颯には感謝してもしきれないくらい」
一度そこで言葉を切り、深呼吸して心を落ち着けた。
「でも、今日はどうしても走りたかったの。1位になったら颯に言いたいことがあって……」
颯は話しているのを真剣に聞いてくれている。
ギュッと握り締めていた手に汗をかく。
例えダメでも後悔だけはしたくない。
言え……言うんだ莉子‼
「……私、颯が好き」
これが今の私の精一杯の気持ち。



